Sunrise @ Mauna Kea

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Quote of the Day

2008年12月5日金曜日

ENTROPY

80年代初頭に出版されたJ・リフキンの「エントロピーの法則」ー21世紀文明観の基礎ー(祥伝社、竹内均訳)を本棚から引っ張りだしてパラパラと読み返してみた。

さまざまな示唆に富む記述がある中で:

歴史とは「第ニ法則」の反映である...事が起こるたびに、ある一定量のエネルギーが永遠に失われ、全エントロピー過程は、常に最大へと移行する。そして、歴史の流れに重大な転換期が発生するのは、この増大したエントロピーの総和がすべて蓄積され、高まり、その結果、私たちを取り巻く世界のエネルギー源が質的に変化せざるをえない時なのである。そして、それとともに新しい形態のテクノロジーが生まれ、また新たな社会的、経済的、政治的制度が形成されるわけである。。。

※本書では、熱力学の第ニ法則、つまり「エントロピーの法則」を、
「物質とエネルギーは一つの方向のみに、すなわち使用可能なものから使用不可能なものへ、あるいは利用可能なものから利用不可能なものへ、あるいはまた、秩序化されたものから、無秩序化されたものへと変化する」と表している。

最終章:新たなる世界観の確立では...

過去に見られたエネルギー環境の変化は、転換期といっても、その期間が数百年にまたがっていたが、今度の変化はそうはいかないということである。高エネルギーを基盤とした現代の社会的・経済的システムがもろすぎるだけでなく、再生不可能な資源を継続的に投入せざるをえなくなっていることであり、いつ途方もない大崩壊に見舞われないとも限らない。エネルギー環境が変化していくうえで、今後2、30年間がいちばん肝心であることは確かだ。

と予見し、生物種としてのわれわれ人類が存続していくには、地球に対する侵略を停止し、自然の秩序に順応していくこと(低エントロピー文化/社会への転移が必要)である、と述べている。

最近読んだ松岡正剛氏の「知の編集工学」(朝日文庫)のなかで、情報とは「エントロピーの逆数」であるという記述があり、それが本書を読み返すきっかけとなった。(たしかに個人の何かを知りたいためにキーワードを選択する意思とGoogleの検索エンジンがなければ、高エントロピー状態でネット上にあふれる「情報」は情報にはならない。)

低エントロピーの奇跡とも言うべき生命の一種である人間が、社会/環境内外のエントロピーに影響を与え/与えられながら何のためにどのように生きていくのかを問うている書であることをあらためて認識した。

※PHP新書から今秋出版された「本質を見抜く力」ー環境・食料・エネルギーー、養老孟司/竹村公太郎 も「ものの見方」という観点から非常に参考になります。